酵素をうまく活かす
疲労回復やダイエット関連の健康情報の中で良く登場する『酵素』。私たちの体の中でどのような働きを持っているのでしょうか。『酵素』とは『全ての生命活動を維持する様々な生体反応(体内環境の安定をはかる為に必要不可欠)をスムーズに行う為に欠かせない、手助けをするもの』とでも言うべきものです。つまり、酵素が無いと私達の体はうまく機能しない、ということになります。
例えば、『消化酵素』が無い・足りない・或いはうまく機能しなかった場合、私達はせっかく食事を取ってもその中に含まれるあらゆる栄養素をうまく取り込む事が出来ません。例えば毒素の分解についても酵素は極めて重要です。肝硬変のような病態では肝臓での『有害なアンモニアなどから尿素を合成するのに必要な酵素』の合成能力が著しく下がります。その結果として『アンモニアなどの無毒化』が出来なくなると尿毒症と呼ばれる状態となり、ついには昏睡状態にまで至ってしまいます。
最近では酵素について『酵素と言うのは実は体内の総量が大体決まっていて、それは加齢と共に徐々に減少して行き、最後には生命活動を維持するのに必要な量を割り込み、生命活動は終演を迎える』と言う学説があり注目されています。この考え方では酵素の減少のスピードを最小限に止める、或いは不足している酵素をうまく補ってやる事が健康と長寿にとって重要な要素なのだ、と言う事になるのです。
生体内の酵素は大きく『代謝酵素』と『消化酵素』に分ける事が出来ます。生命維持へのより直接的な関与と言う点では当然代謝酵素が重要になってきます。しかし残念ながら代謝酵素を外部から与えると言う方法は、通常の医薬品・健康食品のどの手段を用いても現時点ではまず不可能です。ですが『酵素全体としての総量が一定』なのであれば消化酵素を外から投与してあげる事で消化酵素の必要量を減らせばその分代謝酵素の割当が増えるので、その代謝酵素に働いてもらう、と言う考え方も可能となります。
勿論、あくまでも仮定の理論を前提としているのですが、どうも診療の中では実感としてこの考え方はそれほど大きく間違ってはいないのだろうと言う感触があるのも事実です。何よりこの『消化酵素を外から加える』と言う方法ではよほど過激なことを考え、実行しない限り副作用の類いの心配が極めて低いと言うのも大きな魅力です。
突き詰めればやはり何をどのくらい食べ、それを以下にちゃんと消費するかに尽きる事ではありますが、酵素をうまく使う事でその目的の達成は多少なりと容易になっていくものなのではないでしょうか。酵素についてますます研究が進む事が期待されます。